「景観法」が施行 業界としての取り組みを(2005年1月18日号)
▼景観の整備や保全を促進する、日本で初めての「景観緑3法」が昨年6月成立し、12月から施行された。その中心になる「景観法」は全7章107条から成るものだが、骨子は「景観計画」制度と、「景観地区」制度の創設である。「景観計画」は、景観行政団体(都道府県や指定都市など、または都道府県との協議して景観行政をつかさどる市町村)が策定するもので、住民やNPO団体も提案できる。景観に含まれるのは、建物をはじめ、樹木、道路、河川、港湾、海岸など幅広く、都市計画区域外でも指定できる。これに対し、「景観地区」は、市町村が定める市街地の景観(都市計画)での規制である。景観行政団体が「景観計画」を定めた地域内で建物などを建てる場合、事前に届出が必要で、景観行政団体は30日以内にその形態や色彩などに関して変更勧告を出すことができる。一方、「景観地区」に定められたエリア内で建物を建築する場合は、色彩やデザインなどについて市町村の認定を得ないと着工できない。つまり、「景観計画」が、建物の建築などに対する届出・勧告を基本とするゆるやかな規制誘導なのに対し、「景観地区」は認可制によって、より厳しく規制し、積極的に景観形成を図る制度である。
建設需要のV字回復はあるか 社会の変化に注目を (2005年2月18日号)
▼昨年、大手ゼネコンの受注高は4年ぶりに前年を上回った。国土交通省の04年調査(50社)は13兆611億円で前年比4.2%増。日建連の発表でも会員企業57社の受注額は13兆1640億円で同3・6%増となった。ピークの91年に比べるとほぼ半分の数字だが、縮小の一途であった建設市場もようやく底を打ったかにみえる。土木は9年連続の減少とまだ歯止めがかからないが、民間の旺盛な需要が下支えして建築は堅調だ。特に伸びているのは輸出が好調な製造業関係の工場や研究所など。業種別では電気機械や輸出用機械、その他機械などの分野の伸びが著しい。非製造業関係ではマンションやオフィスビル、倉庫などの需要が増加した。
元請け比率アップは朗報 (2005年3月18日号)
▼日本塗装工業会の実態調査によると、昨年度の完成工事高総額は7541億円で、8年連続の減少となった。しかし、その中味を詳しくみていくと、いくつかの傾向が読み取れる。まず、前年度比2・9%の減少は、会員数の減少比率とピタリと一致する。1事業所平均の前年度比が示しているように、工事の実態は「横ばい」である。会員が減った分だけ、完成工事額が減ったわけだ。新築・改修(塗り替え)別にみると、新築は約7%、改修は約1%強減少し、改修に比べ新築の減少幅が大きい。2020億円程度とみられる新築工事額は、統計上の記録がある過去21年間では最も少ない数字だ。おそらく1970年代後半ぐらいの水準ではないだろうか。新築工事がピークであった93年に比べると、ほぼ半減してしまった。これに対し改修工事は、減ったとはいえバブル期の91年をも上回っている。会員が減った分を考えると、1社平均の改修工事額は前年度より少し増加していることになる。
公共工事品確法が施行 安値受注はなくなるか (2005年4月18日号)
▼公共工事の品質確保の促進に関する法律(公共工事品確法)案が3月30日成立し、4月1日から施行された(4面に全文)。全国でダンピング受注、低価格入札が多発する中、ようやく公共工事の品質低下に対する危機感が高まってきた。公共工事の品質は、受注者の技術的能力に負うところが大きいため、「価格以外の多様な要素をも考慮し、価格及び品質が総合的に優れた内容の契約がなされることにより、確保されなければならない」(基本理念)とし、従来の価格偏重の入札制度から転換する方針を打ち出した。発注者は競争参加者の技術的能力を審査しなければならず、競争参加者からの技術提案に対しては、適切に審査・評価するよう求めている。また、高度な技術提案を求めた際には、審査後に予定価格を設定することができ、その場合は学識者からの意見を聴取する。さらに注目されるのは、発注者に専門的な知識・技術がなく、発注関係事務を適切に処理できない場合、「契約により、発注関係事務の全部または一部を行うことができる者の能力を活用するよう努めなければならない」(第15条)とし、第三者機関の活用を促している点だ。
「産廃」になるか「資源」にするか 残ペンの意外な利用法 (2005年5月18日号)
▼塗料の水系化が進んでいる。建築上塗材の場合、昨年は水系64・7%、溶剤系35・3%(日本建築仕上材工業会統計)と、すでに水系が主流になっている。その背景には環境問題、とりわけシックハウス問題がある。いまや外装材でもF☆☆☆☆対応製品でないと、現場施工がしにくくなってきているのが現状だ。居住者が生活しているところで作業をしなければならない改修工事の場合、溶剤系の塗料を使うには細心の注意が必要である。改正建築基準法の規制物資に指定されているトルエンやキシレンは、空気より3倍も重いため、屋外の高い個所で使っていても油断はならない。マンションの上階で工事をしていたところ、シンナーに含まれるトルエンが、壁をつたって階下の部屋の窓から流れ込み、住民から苦情がきたというケースも報告されている。
高まる健康・環境志向 消費者のライフスタイルに変化 (2005年6月18日号)
▼国交省が発表した05年度の建設投資見通しは、前年度比2・7%減の51兆3300億円で、9年連続のマイナスである。民間は1・1%増と堅調だが、政府投資は8・4%減と大幅にダウンする見込みだ。このように新築市場が縮小の一途をたどっている一方、改修市場には活気がある。03年の増改築・改装等調査(国交省)では、工事件数は前年比で19%も増加している。また、三菱総合研究所が国交省の委託を受けて行った「リフォーム・リニューアル市場の将来予測」によると、同市場は2000年26・2兆円、2005年28・2兆円、2010年30・8兆円、2015年32兆円と予測。00年を基準年として年平均で1・3%伸びるという。同報告書では「維持」「補修」「改修」の3分野別に分析しているが、内外装リフォームなどが含まれる「改修」(竣工時点を上回るレベルに機能を高める)の伸びが最も大きく、15年までで年平均1・9%と予測。その結果、00年に9・3兆円の改修市場は、15年には3割増の12・2兆円にまで拡大するとしている。住宅改修市場の場合、外装リフォームが1・5兆円から1・6兆円に、内装リフォームが0・6兆円から0・8兆円に伸びるという。とりわけ、「環境負荷低減」「省エネ化」「セキュリティ」「住宅のIT化」などの分野で大きな伸びが期待されている。
公共事業は「悪」か 景観などソフト面の充実を (2005年7月18日号)
▼建設経済研究所が7月12日に発表した建設投資見通しによると、本年度の建設投資額は前年度比で1・2%減の52兆1300億円になる見込みだ。4月に発表された同見通しでは、0・7%増を予想していたが、政府の建設投資が大幅に下回る見込みとなったため、下方修正された。来年度は、これをさらに下回り、前年度比2・4%減の50兆8800億円を予想している。本年度の民間非住宅投資は同4・8%増の14兆700億円と堅調だが、政府投資は同6・2%減の19兆7800億円にとどまる。災害復旧の補正予算が一時的に下げ幅を緩和するが、減少傾向が続くものと見ている。景気の指標にもなる住宅建設は、本年度は同0・1%増の18兆2800億円で、ほぼ横ばい。着工戸数は119万戸で同0・3%減少する予想である。持ち家、借家は減少するが、マンションブームもあって分譲住宅は増加傾向にあるようだ。
「派遣」と「融通」の違いとは 雇用改善法改正が及ぼす影響 (2005年8月18日号)
▼郵政民営化法案が参議院で否決された結果、衆議院が「自爆」解散した。おかげで数多くの法案が審議未了のまま廃案になってしまった。しかし、建設業界に大きな影響を及ぼしかねない「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」(建設労働者雇用改善法)の改正案は、幸か不幸かすでに衆参両院で可決され、世間にあまり注目されることもなく成立した。この改正案の趣旨は、技能労働者の就業機会確保のため、専門工事業者間で常用労働者の「融通」を認めることである。つまり、人手が余っている会社から、足りない会社へ職人を貸すことを可能にするのが狙いだ。職人が自由に融通できるなら、業績が悪化しても常用工を解雇せずにすみ、結構な話である。だが、この法案は専門工事業界にとって「両刃の剣」でもある。
大型ハリケーンの影響 石油製品が一斉値上げへ (2005年9月18日号)
▼ウェブ検索エンジン「グーグル」には、「グーグルマップ」(http://maps.google.co.jp/)というユニークな地図情報サービスがある。地図の倍率を自由に拡大したり、縮小したり、画面を移動したり……とここまでは他の地図ソフトと違わないが、「サテライト」というボタンを押すと、なんと一瞬にして衛星から撮影した画像に切り替わる。常に地図と同じ縮尺で表示するため、恐ろしくリアルだ。場所によって精細度は違うが、一応全世界をカバーしている。
新しい可能性を見せた競技大会 (2005年10月18日号)
▼20回目を数えた今年の全国建築塗装技能競技大会は、例年に増して見応えのあるものとなった。新しく協議課題に取り入れられた「フレックススウェード」は、従来のビニールクロスに代わる個性的な内装仕上げが可能になることを印象づけた。大会の花としてすっかり定着したフレックスコート自由仕上げは、テクニック、アイデアともいずれ劣らない秀逸な出来で、審査員も採点に苦労したようだ。これらのデコラティブ塗装は、従来のペンキ塗りのイメージを一変させるものだろう。短い競技時間にもかかわらず、巧みに創作された作品はじっくり鑑賞する価値があり、選手はすでに「アーティスト」の域に達しているといっても過言ではない。こうした技術・技能を世間にPRしないことには宝の持ち腐れである。入賞した選手の属している会社は、ぜひ業界紙をコピーして営業に役立てていただきたい。実際にそのようにして、自社の技術力をアピールし、顧客から信頼を得ているという話も聞く。
塗料を「負け犬」にするな 付加価値とサービスの競争を (2005年11月18日号)
▼「いま値上げをしないのは、塗料の価値を毀損する行為だ」。大手塗料メーカーの中間決算発表の席上、トップから怒りのこもった声が上がった。昨年来の原油高から、塗料の原材料価格が高騰し続けているが、今年の夏米国を襲った大型ハリケーンによる影響がさらに追い打ちをかけた。塗料の原材料を供給する樹脂メーカー各社は、ここぞとばかりに値上げ攻勢に出ている。これに対し、塗料製品の最終需要家の反応は鈍く、原材料の値上がり分を製品価格に転嫁することがままならない。特に工事価格のたたき合いが続く建築汎用分野では、「元請けからもっと値下げしろと言われているのに、とても値上げの話なんか切り出せない」(某塗装業者)というのが現状だ。しかし、そこで易々と引き下がって良いものだろうか。材料が上がっているのに値上げできないとなると、企業の収益を悪化させるだけでなく、この業界の浮沈にもかかわる問題だ。そこで業界の構造的問題が浮かび上がる。
いまこそ「出面」の復権を 雇用改善法をめぐる動き (2005年12月18日号)
▼今年10月から施行された「建設労働者の雇用の改善等に関する法律の一部を改正する法律案」は、「労働者派遣法」で禁止されている建設技能者の派遣を、直用工の「送出」という例外的措置で可能にするものだ。以前に本欄で指摘したとおり、専門工事業には、「両刃の剣」となる法改正だけに、今後の具体的な適用事例には注意しておく必要がある。だが、同法を積極的に活用して、技能者の賃金確保・待遇改善を図ろうという動きもでてきた。国交省の「新分野進出/経営統合等促進モデル構築支援事業」は本年度61件が選定された。その中の1つに「賃金確保・待遇改善を実現する建設技能者派遣サービス構築事業」がある。実施主体の「専門工事業建設技能者派遣研究会」は、近畿建専連の北浦年一会長が呼びかけて結成されたグループだ。「雇用改善法によって可能となる技能者派遣のシステムを通じて、派遣サービスという新分野開拓とともに問題のある技能者社会を望ましい社会に変換する」ことを事業目的に掲げ、労務単価の低落を適正化し、最低賃金の確保、社会保険の加入の実現を図ることにしている。